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認知症の相続人がいる場合に法定相続を使うメリットとは?

車いすの老人を介護する人形

親が亡くなり、相続の手続きをしなければならなくなったとき、多くの場合、遺産分割協議が行われます。

遺産分割協議とは、残された財産を誰がどのくらい相続するか、相続人同士で話し合って決めることです。
全員が合意したら、遺産分割協議書にそれぞれが署名捺印します。

しかし、相続人の中に認知症の方がいると、話し合いをして全員分の判をついたとしても、その遺産分割協議書は無効になってしまいます。
このため、認知症の方がいる場合は成年後見制度を利用することを考えるのが一般的でしょう。
ただし、成年後見制度の利用は裁判所へ申し立てるため一般の方にはハードルが高く、時間もかかります。

この成年後見制度を利用せずに相続できるのが法定相続による手続きです。
相続人の中に認知症の方がいるときの一つの方法としての法定相続のメリットについて書いてみたいと思います。

 

法定相続分による相続なら遺産分割協議は不要

相続財産について話し合いをする人形

認知症の相続人がいる場合に遺産分割協議を行なうためには、成年後見人制度を利用するしかありません。
しかし、成年後見制度は、一度制度を利用すると、その人が亡くなるまで成年後見人や成年後見監督人に毎月費用を支払わなければなりません。

また、成年後見人を立てたからと言って、遺産分割協議で自由に遺産分割は行えません。
成年後見人は、物事の正しい判断をする能力が低下している人が不利益を被らないように保護する役割があります。
認知症の相続人の相続分が法定相続分を下回るような分割方法の場合、成年後見人は認めることはできません。

こうした場合には、法定相続分で相続してしまうというのも一つの手です。

 

法定相続の遺産の分け方

法定相続の場合、文字通り法で定まった通りの順番と割合で相続を行ないます。

<順番>

配偶者は常に相続人

第1順位 子供(子供が死亡している場合等は孫)
第2順位 父母(父母が死亡している場合等は祖父母)
第3順位 兄弟姉妹

相続人の範囲は、配偶者+順位の一番高い人となります。

<割合>

配偶者のみの場合→財産の全て
配偶者+第1順位の相続人がいる場合→配偶者1/2、第1順位1/2
配偶者+第2順位の相続人がいる場合→配偶者2/3、第2順位1/3
配偶者+第3順位の相続人がいる場合→配偶者3/4、第3順位1/4

相続人が母と子のみ、といったシンプルな相続であれば、わざわざ成人後見制度を利用しないほうが相続手続はスムーズです。

 

法定相続のメリットとデメリット

介護施設の休憩室

法定相続は手続きとしては楽になりますがデメリットが生じる場合があります。
以下にメリットとデメリットを挙げるので利用を検討する際に参考にしてください。

 

法定相続のメリット

法定相続のメリットは、話合いの必要がなく相続分を取得できることです。

たとえば、父母ともに有料老人ホームで暮らしていて、そのうちの父が亡くなり、母は認知症を患っているとします。
法定相続だと、母が1/2、子が1/2ずつ相続することになります。

母の相続分の財産を、母が生きている間に勝手に処分したり使ったりすることはできませんが、将来的には母の相続分は子が相続することになります。
家や土地などの不動産があったとしても、法定相続で財産を引き継ぐことで、子が一人っ子なら成年後見制度の手続きや費用も発生せず、最終的には子が取得することができます。

これが法定相続を使うメリットとなります。

 

法定相続のデメリットは不動産の共有

法定相続のデメリットとしては、不動産の共有状態が発生してしまうという点です。

不動産がある場合に、相続人が複数の場合に法定相続をすると、全ての相続不動産は相続人全員の「共有」という状態になります。
相続手続をすると不動産の名義は全員の名義が相続分の割合で入ります。

不動産の所有権を共同名義にすると問題になるのが

  • 名義人全員の同意がないと土地の売却や家の処分などができない
  • 名義人が死ぬと権利関係がどんどん複雑になる
  • 不動産に関して争いが発生しやすい

という点です。

所有権を共有している人数が増えるほどに、不動産の管理・処分が難しくなります。
基本的に相続不動産については共有名義にすべきではありません。

多くの兄弟で不動産が共有となってしまうのであれば、成年後見制度を使い、認知症の相続人と他に1人の名義にしておきましょう。

 

相続放棄したい場合は成年後見人制度を利用する

財産管理の書類とその計算をするための電卓とペンとノート

マイナスの遺産のほうが多く、相続放棄したい場合は成年後見人制度を利用します。

相続開始から3カ月の間、何もしないでいると法定相続の割合でマイナスの遺産を引き継ぐことが決まってしまいます。
遺産を完全に放棄するためには相続人の全員が放棄しなければなりません。
相続開始後3カ月以内に遺産放棄の手続きを済ませましょう。

ただし、成年後見人制度を利用した場合は、成年後見人にも遺産を放棄すべきかどうか熟慮する時間が必要なため、選任されてから3カ月となります。

 

まとめ

相続のときはまず遺産分割協議を行ないます。認知症の方がいるときは成年後見人をたてることが一般的です。

しかし、必ずそうしなければならないというわけではありません。

皆さんの置かれた状況に応じて、適切な対処をしていきましょう。

どうするのが一番よいか迷ったときは、相続の専門家に相談してみましょう。

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司法書士・行政書士 成川修一

司法書士事務所ローライト湘南 代表 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了 研究所研究員、プロギタリストを経て、神奈川県藤沢市で司法書士・行政書士事務所を運営。 相続、不動産、企業法務が専門分野

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