相続手続きで特殊な財産として生命保険があります。
相続財産を分けるときに生命保険をめぐってトラブルとなるケースもあります。
生命保険に関して、
- 生命保険は相続財産となるのか?
- 相続人同士の話し合い(遺産分割協議)で生命保険を分けられるか?
- 生命保険を多くもらった相続人の相続分は減るのか?
- 相続放棄したら生命保険はもらえないのか?
といった点について解説します。
この記事を読んでおくと相続時に必ず役にたちますのでぜひ読んでみてください。
生命保険は相続財産か?
生命保険は、故人が残したものではありますが基本的に相続財産ではありません。
生命保険は、保険金を受け取る権利のある人の財産だからです。
ただし、2点以下の点に注意が必要です。
- 相続税の関係では、「みなし相続財産」となり、相続財産にいれて計算をする。
- 受取人を亡くなった人とする保険金は相続財産となる。
税金の関係や契約内容によって、相続財産として扱う場合があります。
ここがまず生命保険が特殊な点です。
遺産分割協議で生命保険を分けられるか?
相続財産を相続人同士で話し合ってわけることを遺産分割協議といいます。
この協議においては、分ける対象が相続財産であるかどうかが問題となります。
ポイント
- 保険金が相続財産に含まれる → 遺産分割協議で分けられる
- 保険金が相続財産に含まれない → 遺産分割協議の対象とならない
つまり亡くなった人を受取人とする生命保険については、相続人同士の話し合いで金額を自由に分けられますが
相続人の誰かを生命保険金の受取人とする場合は、話合いをする必要なく、その人の財産になります。
生命保険の受取人を家族の誰か賭している場合は、通常遺産分割協議書に生命保険について記載しなくて大丈夫です。
生命保険金を多くもらったら相続分は減るのか?
「生命保険を多くもらってる人が、他の相続財産についても平等に分けてもらえるのは不公平だ!」
と思いませんか?
しかし、過去の裁判例では、
相続人を受取人として指定した「第三者のためにする契約」である生命保険契約においては、
保険金受取人は保険金請求権を固有の権利として取得し、保険金は特別受益財産に当たらない
(東京高判平10・6・29)
と判断されています。
基本的には、生命保険金を多くもらっている相続人がいたとしても
他の相続財産の法律上の取り分は減らない
ということになっています。
ただし、以下のような場合に関しては、生命保険金をうけとった相続人の相続分が減少することがあります。
- 保険金の額、遺産の総額に対する比率、同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献度、相続人の生活実態を考えると生命保険金を受け取ることが他の相続人との間で著しく不公平になる
過去の例であったのは、
死亡保険金が高額であり、遺産総額の6割を占めていて、3年5か月程度の婚姻期間で生命保険を受け取りをした
方の相続分が減額(=特別受益にあたる)されたものがあります。
生命保険によって相続分が変わるのかについては、ケースバイケースになりますので弁護士、司法書士のような相続の専門家に相談してください。
相続放棄をしたら生命保険はもらえないのか?
亡くなった方に多額の借金などがあった場合に、相続そのものをしないことを相続放棄といいます。
相続放棄に関しては家庭裁判所に申立てをして行います。
この場合、相続人ではなくなるのですが、生命保険の保険金自体は受け取ることができます。
ただし、前述のように受取人が亡くなった方になっている保険金は受け取ることができません。
また、多額の借金がある場合には、生命保険を解約して借金の返済に充ててしまっているかもしれません。
生命保険は受け取ったので、あとの相続財産の争いに巻き込まれたくないといった場合には、
相続放棄をして、相続人の話合いから抜けてしまうという手段もありますね。
基本的に生命保険は相続放棄の影響を受けないということだけ知っておきましょう。
まとめ
生命保険は相続手続きにおいてかなり特殊な扱いの財産となります。
その特殊性ゆえに相続対策としてしばしば使われます。
ただし、保険会社のいうことを鵜呑みにしているとまったく相続対策として
役に立たない無駄な商品を選択してしまう場合もあります。
あなたの資産を守るためにも生命保険の相続における取り扱いを知っておきましょう。