実印には絶大な効力があり、しっかり管理しなければ悪用されるリスクがあります。
自分は大丈夫だと思っていても、高齢となった親が紛失・盗難によって悪用されたり、騙されて財産を失うようなことがあれば、あなたも他人事ではなくなります。
相続手続時でも実印を勝手に押されたといったことでトラブルになるケースもあります。
高齢者の実印に関するトラブルを回避の仕方を解説します。
認知症で成年後見人をたてているとき
認知症で判断能力が低下し、裁判所に申し立てをして親に成年後見人がついている場合、市区町村に届出してあった印鑑登録は抹消されます。
印鑑登録が抹消されると、当然ながら印鑑証明書も発行されなくなります。
実印が手元にあって、それを使用して押印したとしても、日用品の購入や日常生活に関する行為を除き無効になります。
成年後見制度を利用している場合には、判断能力が低下しているため法律行為を単独で行うことはできなくなるからです。
実印と印鑑証明書が必要となるケースは、以下の手続のときです。
実印が必要になるケース
- 相続の手続きを行なうとき
- 家や土地、マンション等の売買をするとき
- 抵当権を設定するとき
- 自動車の売買をするとき
- ローン契約を組むとき
成年後見制度を利用している場合は、認知症の人に代わって、成年後見人の実印と印鑑証明書を使用することになります。
たとえば相続の手続では、遺産分割協議書や銀行の書類への押印には、成年後見人の実印と印鑑証明書を使用します。
悪用リスクを減らしたいときは印鑑登録の廃止もできる
印鑑登録をしている市区町村へ廃止の届出をすれば、実印の印鑑登録は無効になります。
上述のとおり、実印と印鑑証明書が必要になるときは、財産や権利に関する重要な契約をするときです。
実は、重要な取引の時だけ実印を市区町村へ登録するといったことも可能なんです。
実印の登録は本人確認書類があれば当日でもできます。
こうしておけば、印鑑証明が必要な手続きについて、実印を悪用されるというリスクはなくなります。
認知症とまではいかないけれど、高齢となった親が実印や印鑑証明書を紛失してしまったり、他人に渡してしまう心配もありますよね。
いつの間にか親の名義で借金されたり連帯保証人にされてしまうことが考えられます。
あるいは、騙されていると気づかずに自分で不利な契約をしてしまうこともあるかもしれません。
特に高齢者は狙われやすいため注意が必要です。
- 実印の管理に不安がある
- 家族に実印を悪用される恐れがある
- 不動産をだまし取られるようなことを避けたい
といった場合には、印鑑登録の廃止が有効手段になります。
まとめ
実印が必要となるときは、それほど多くありません。家で保管しているつもりでも、探してみたら見つからないということもあるかもしれません。
これを機に、親と実印の悪用リスクについて話をして注意喚起し、家族の財産を確実に守れるようにしましょう。