相続の手続きで作成する遺産の分割方法を取り決めた「遺産分割協議書」には、相続人全員がそれぞれの「実印」を捺印する必要があります。
人によっては、実印を押さなければならない場面がこれまでになく、実印がないという方もたまにいます。
とくに20代ぐらいの若い方に多いですね。
実印とは、市区町村の役所に登録してある印鑑のことです。登録されていない印鑑を遺産分割協議書に捺印しても手続きができません。
相続に際して、急に実印が必要になったら、以下の流れで印鑑登録を行ないましょう。
印鑑を用意する
登録するための印鑑を用意します。
登録できない印鑑
以下の印鑑は登録できませんので注意してください。
・スタンプ印(シャチハタ印等)
・ゴム印
・逆彫り印章
・その他印章が変形しやすい印鑑
100円ショップなどで買える大量生産されている印鑑も、実印として登録するのは危険です。
あなたの実印と同じものを他の人も簡単に入手できてしまいます。実印用の印鑑を作ることをおすすめします。
印鑑の名前は、フルネーム、姓のみ、名のみのいずれでも登録可能です。
なお、同じ苗字だからといって家族がすでに登録している印鑑を使用することはできません。登録する印鑑は1人1個です。
登録できるサイズ
一般的には、市区町村が登録可能としているのは8~25mmです。
なお、藤沢市では、「1辺の長さが25ミリメートル以下の正方形に収まるものに限ります(1辺の長さ7ミリメートル以下の正方形に収まる印鑑は不可です)」と案内されています。
藤沢市では8mmより小さくても、7mmを超えていれば登録できるようですね。しかし、他の市区町村へ引っ越ししたときのことを考えると、一般的なサイズで作成するのをおすすめします。
ハンコ屋さんに行って「実印を作りたい」といえば、規格にあったものを提案してくれるはずです。
ネットでも実印向けの印鑑を注文できるので、探してるのもよいでしょう。
実印におすすめの材質
印鑑には材質によっていろいろな特徴があります。
職業柄いろいろな印鑑を使う機会ありますが、個人的なおすすめは以下のものです。
- 水牛
- 柘
実印は一生使うもので耐久性が必要という意見があります。
ただ、実印を使う機会というのはそれほど多くないです。
また耐久性が高いと言われる素材でも欠けるときは欠けます。ふちが欠けている実印はよく見かけますね。
ですので、個人的には押しやすいもの、押し心地のいいもので選ぶのがいいのではないかと思います。
素材が固いものはあまり押し心地はよくないように感じます。
柘は素材としてはリーズナブルですが、結構押し心地はいいですよ。
市区町村へ印鑑登録に行く
印鑑登録申請書と登録したい印鑑を市区町村へ提出すると、だいたい即日で登録が完了します。
提出の際に、本人確認書類(運転免許証、パスポート、写真入りのマイナンバーカード等)の提示が必要となりますので、忘れずに持参しましょう。
印鑑登録申請書は、市区町村の窓口にあります。ホームページからダウンロードできる場合もあるので、事前に確認しておくとスムースです。
藤沢市の印鑑登録申請書はこちらからダウンロードできます。
印鑑登録が完了すると、「印鑑登録証(印鑑カード)」を交付されます。大切に保管しましょう。
印鑑カードがあれば自分が役所に印鑑証明書を取りに行けなくても代わりに取りにいってもらうことができます。
未成年でも登録できるか
印鑑登録は15歳以上であれば、未成年でも登録が可能です。
保護者の同意も必要ありません。
ただし、15歳以上でも成年後見制度を利用している人は登録することができません。
認知症などにより成年後見人制度の利用が開始されると、印鑑登録は自動的に抹消されます。
成年後見制度を利用している認知症の相続人がいる場合には、遺産分割協議書には成年後見人が実印を押し、成年後見人の印鑑証明書をつけることになります。
引っ越したら登録はどうなるか
他の市区町村への転出の届出をするときは、印鑑登録の廃止の手続きを行ないましょう。
ちなみに藤沢市では、次の場合には印鑑登録が自動的に廃止になります。
(1)藤沢市から他市区町村へ転出したとき
(2)死亡したとき
(3)婚姻などにより氏名が変更となったとき
市区町村によって、手続きの要否が異なることがあるので、確認するようにしましょう。
印鑑登録証や印鑑を紛失した場合
印鑑登録証や印鑑を失くしてしまったときは、廃止の手続きが必要です。そして、また一から登録をし直します。
印鑑証明書を取得する
実印を押す場面では、印鑑証明書の添付が必要な場合がほとんどです。
遺産分割協議書を使って不動産の名義変更をする際には印鑑証明書が必要になります。
印鑑証明書とは
印鑑証明書には、登録した印鑑の印影が載っています。
書類に押した印鑑が、印鑑登録したものと同じであることの証明になります。
印鑑証明書の取得方法
印鑑登録証(印鑑カード)を持って市区町村の窓口へ行くと、印鑑証明書を交付してもらえます。
手数料は市区町村によって異なりますが、1通につき数百円です。
マイナンバーカードを持っていれば、コンビニでの取得も可能です。すべての市区町村で利用できるわけではないので、対応しているかどうか事前に確認しましょう。
まとめ
実印を押さなければならないシーンというのは、そんなに多くありません。
しかし、いざ必要になってから印鑑を作って、登録に行って、となるとそれなりに手間がかかります。
とはいえ、必要もないのに印鑑登録証や実印を大事に保管しておかねばならないのも気が引けますよね。
管理が不安という人は、登録していなければただのハンコですから、印鑑だけ作っておいて必要になった時にいつでも登録できるようにしておくとよいでしょう。