遺言書を書いたけれど、紛失してしまうかもしれない、あるいは、自分の死後に隠蔽されたり偽造されたりするかもしれない、という不安は残ります。
公証役場に行って公正証書遺言とすれば確実ですが、お金も手間もかかります。
そんな悩みを解決してくれそうな遺言書に関する法改正が決まりましたので、ご紹介したいと思います。
法務局による自筆証書遺言の保管制度の開始
平成30年7月6日、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立しました。同年7月13日に公布されています。
法改正によって2年以内には、遺言を書いた本人が申請すれば法務局で遺言書を保管してもらえるようになります。
現状、自分で書いた遺言は自宅の金庫や仏壇などで保管されることが多いです。
遺言書自体をなくしてしまったり、相続人による廃棄・隠匿・改ざんされたなんてケースも実際にあります。
法務局が保管をすることで、相続のトラブルを防ぎ、スムースに手続きが行われることを促進するのが今回の法改正の目的となります。
遺言書を法務局はどのように保管するか?
法務局は以下のような手続きで遺言書の保管をします。
- 遺言書を書いた人の申請を受け付けて元の遺言書を預かるとともに、画像データ化します。
- 相続が発生し、相続人が遺言書の写しを請求すると、閲覧することができます。
- 相続人のうちの誰か一人に写しが交付されると、ほかの相続人にも遺言書が保管されていることが通知されます。
ホームページ上にはまだ詳しい手続きについての案内はありませんが、相続人が遺言書の写しを請求する際には、被相続人や法定相続人全員の戸籍謄本の提出などを求められることになるかもしれません。
法務局へ預けると遺言書の検認が不要に
法務局の遺言書保管を利用すると、家庭裁判所による遺言書の検認の手続きを省略することができます。
遺言書の検認の省略ができるメリットとしては
- 家庭裁判所への申立書の作成などの手続きをしなくていい
- 実際に期日に裁判所へいって開封に立ち会うことが不要
- 約1か月ほどかかる時間を短縮できる
- 検認に伴う専門家費用を節約できる
といったことがあげられます。
一般の方ですと裁判所の手続きは精神的にもハードルが高いので、費用をかけずに遺言書を作りたい方は法務局へ預けてしまった方がいいですね。
財産目録はパソコンでの作成が可能に
自筆証書遺言は、現行ルールではすべて自筆で書かなければなりませんが、法改正後は財産目録に関してはパソコンでの作成が可能になります。
また、預金通帳のコピーや不動産の登記事項証明書などを添付することも可能となります。
財産の数が多いとすべて手で書くのは大変です。
さらに、財産の内容に変更があった場合にまた手で書き直すのはとても手間がかかります。
ルールの緩和により、財産目録だけでもパソコンでの作成が認められるのは、作成する側にとってはうれしいことですね。
まとめ
遺言書を作成することで、自分の死後に家族が揉めたり、相続がスムースに行われなかったりすることを防ぐことができます。
法改正により、より負担を少なく、そして確実に遺言書を残すことができるようになりそうです。
すでに作成して自宅に保管している遺言書も、法の施行後に法務局で保管することを検討してみてはいかがでしょうか。