親が亡くなって相続の手続きをする際に、まずは遺言書がないか確認が必要です。
遺言書の有無によって相続手続きの方法が全く変わってしまいます。
遺言書を探してみたら稀に複数出てくる場合があります。
そんなときにどう対処したらいいか解説いたします。
遺言書の探し方
まず、遺言書には以下の3種類があります。
遺言書の種類
- 自筆証書遺言:遺言の全文・日付・氏名を自筆で作成、押印した遺言書
- 公正証書遺言:公証役場で公証人に作成してもらい、保管してもらう遺言書
- 秘密証書遺言:自分で作成した遺言書を封をして公証役場に持ち込み、存在のみ保証してもらった遺言書(ほとんど利用されていません)
それぞれ遺言書ごとに保管方法が違うので探し方も変わってきます。
公正証書遺言の探し方
公正証書遺言の場合は、
あなたの親が亡くなったあとに最寄りの公証役場に問い合わせれば遺言書の有無を確認することができます。
親が保管を託していた公証役場とは異なる公証役場でも確認してもらえます。
ただし、この確認をしてもらえるのは、相続人のみです。
相続人であることの証明として、下記の書類を持っていく必要があります。
遺言書の確認に必要な書類
- 死亡の記載がある親の戸籍謄本
- 相続人であることを証明できる戸籍謄本
- 身分証明書(運転免許証やパスポートなど)
- 印鑑
公正証書遺言の保管があれば、写しをもらうことができます。
遺言を残した本人は、公正証書遺言の正本と謄本を各1部ずつ交付されていますので、それが自宅で見つかることもあるでしょう。(原本は公証役場が保管します。)
また、信託銀行の遺言信託サービスを利用している場合も通常は公正証書遺言として作成されます。謄本が信託銀行に預けてあるといったケースもあります。
なお、親が生きている間は、本人以外の人が公証役場で公正証書遺言の有無を確認することはできません。
自筆証書遺言と秘密証書遺言の探し方
自筆証書遺言と秘密証書遺言の場合は書いた人が自分で保管しなくてはなりません。
それだけ探すのが難しくなります。
書斎の鍵付きの引き出しや仏壇などの自宅に保管していることもあれば、親しい親族に預けていたり、弁護士や司法書士、または銀行に預けていることもあります。
実務上多いのは同居の親族に預けているパターンです。
遺言書がでてきたら、開封せずに家庭裁判所に持っていって検認という手続きをする必要があります。
遺言書が見つかったからといってその場ですぐに開封はしないでください。
遺言書が複数見つかったらどうすればよいか
自宅で複数の遺言書を見つけたときは、
注意ポイント
- 開封はしない
- すべての遺言書を家庭裁判所に持っていく
という点がポイントです。
遺言書を作成したあとに状況が変わり内容を書き変えることは珍しくありません。
自筆証書遺言は家庭裁判所で相談人等の立会いのもとで開封し検認を受けなければなりません。
公正証書遺言が残されていることを確認したのに、自筆と思われる遺言書が出てきたときも、開封せずに家庭裁判所へ持っていきましょう。
すでに作成した公正証書遺言の内容を撤回するために、後から自筆証書遺言を書いた可能性があります。
どの遺言書が有効になるのか?
どの遺言書が有効であるかは以下がポイントとなります。
ポイント
- 後の日付で書かれた内容が優先
- 内容が矛盾しない限りすべて有効
- 公正証書と自筆証書の優劣関係はない
- 法定された必要事項の記載のない遺言は無効
遺言書が複数ある場合、日付が後のものが有効となります。
しかし、前に書かれた遺言書の内容がすべて無効になるわけではありません。
前に書かれた内容と後に書かれた内容で食い違いがある事項については、後に書かれた内容が有効になります。
遺言は両方有効
旧:土地Aを妻に相続させる
新:土地Bを長男に相続させる
上記の遺言書が出てきた場合、新しい遺言の内容が古い遺言の内容と矛盾しないため、いずれの内容も有効になります。
ところが、以下のような場合には新たに書かれた遺言書の内容が有効となります。
新しい遺言書だけ有効
旧:土地Aを妻に相続させる
新:土地Aを長男に相続させる
公正証書遺言と自筆証書遺言の両方が見つかった場合も、有効となるのは書かれた日付が新しいものです。
公正証書遺言のほうが正式な書類として優先されそうなイメージを持たれるかもしれませんが、そんなことはありません。
きちんと要件を満たしていれば、公正証書遺言のあとに自筆証書遺言を作成した場合でも新しい方が有効になります。
公正証書遺言を公証役場で手続きをしてその内容を変更した場合は、前に作成されたものは撤回し新たな遺言書が作成されています。
まとめ
親が亡くなって慌てて遺言書を探したら複数出てきたり、あるいは最初は見つからなかったのに後になって出てきたりすると、手続きがやっかいになることがあります。
遺言書があるのかないのか、あるとすればどこに保管しているのか聞いておくことで後々のトラブルを回避することができます。
公正証書遺言であれば本人の生前に内容を見られることはないと説明しておけば、遺言書を書いた本人も安心して遺言書の存在を伝えることができます。
その点では、遺言書を書く時には公正証書遺言をおすすめします。