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相続手続き

特別寄与料の請求権の新設で介護の不公平感を解消へ。

車いすの老人を介護する女性

夫の家に嫁ぎ、夫が亡くなった後もずっと夫の母親と二人で暮らし、介護をしてきたあなた。

その義母が亡くなったとき、現行のルールでは、あなたは義母の財産を相続することはできません。あなたは相続人には当たらないからです。

平成30年7月13日に相続制度に関する法改正が可決されました。

そのなかに、相続人以外の者の貢献を考慮する方策があります。

それが、特別寄与料の請求権です。

 

特別寄与とは

介護する老人の手を握る女性の手

夫の亡き後も、自宅で義母を介護してきたあなたにしてみれば、なにもしていない夫の兄弟が義母の財産を相続し、自分には何も残らないことは納得がいかないでしょう。

義母が生前に、あなたへの感謝を込めて、財産の一部をあなたにも相続させる内容の遺言書を書いていれば、あなたも相続が可能です。

しかし、義母に介護が必要になったときにはすでに認知症にかかっていて、遺言を残せるような状態ではなかったということも十分にあり得ます。

法改正では、こういった場合に、相続人である夫の兄弟に対して、あなたが特別寄与料として金銭を請求することが認められるようになります。

これまでも、療養看護などの特別な貢献に報いるために寄与分の主張は認められていましたが、それはあくまで相続人のみに認められていました。

兄弟のなかで、誰か一人が親の介護をしていた場合などに、その人が寄与分を主張することによって、ほかの相続人より遺産を多く相続できるしくみです。

しかし、現行制度ではあなたのように相続人ではない人が、献身的に介護をしていた場合に何も主張できないのです。

法改正では特別寄与料の請求を認めることで、こうした不都合が解消されるようになります。

相続人ではない人が寄与者の場合は、相続の手続きの複雑化を防ぐため、遺産分割には加わりません。

遺産分割は相続人だけでそのまま行ない、相続人に対して寄与分を金銭で請求します。

 

特別寄与料の請求を認められるための要件

サポートと記載されたハートマーク

1.亡くなった人の親族であること

特別寄与料を請求できる人は、亡くなった人の親族です。

親族とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族を指します。

夫の母からすれば、あなたは3親等内の姻族に当てはまります。

 

2.無償で療養看護その他の労務の提供をしたこと

現行制度における療養看護の寄与分の主張については、実は結構ハードルが高く、主張したとしても簡単には認められません。

まず、義母が療養看護を必要とする状態であったかどうかです。要介護認定2以上が一つの基準とされています。

病院に行くときはいつも送り迎えをしてあげていた、とか、入院していて頻繁にお見舞いに行ってあげていた、という程度では認められません。

もちろんそれだって、なにもしていない他の兄弟に比べたら立派な貢献なのですが、特別な寄与とまでは言えないのです。

また、あなたが義母を介護するにあたって、無償かそれに近い状態であったことが必要です。

面倒を見ている代わりに、生活費は出してもらっていたとか、御礼をもらっていたということでは、認めてもらえません。

そもそも家族・親族には扶養義務があります。

現行法における寄与については、相続人が対象です。相続人は配偶者や子供などですから、本来互いに助け合わねばならない、ということも加味されています。

相続人以外を対象とした特別寄与料についてはこの点は寄与分ほど求められないかもしれませんが、簡単に認められるものではないと思ったほうがよいでしょう。

 

3.被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与をした

あなたの介護によって義母の「財産の維持又は増加に特別の寄与をした」事実がなければなりません。

完全看護の施設には入らずに、あなたが自宅で介護したことによって義母の財産を維持することができた、など、決して片手間ではできないような貢献が求められるのです。

 

また、特別寄与料の請求権は、「相続の開始及び相続人を知った日から6ヶ月を経過したとき、又は相続開始の時から1年を経過したとき」になくなってしまいます。

したがって、請求するなら相続が始まったら早々に検討に入らねばなりません。

請求するのは、夫の兄弟たちです。言い出しづらいかもしれませんし、なんとか言い出したとしても、受け入れてもらえるかは分かりません。

夫の兄弟たちは、あなたがどれくらい義母のために献身的に介護したかなど、よくわかっていないでしょう。

あなたの貢献を証明するために、介護しているときから、介護にあてた時間や何をしたかがわかる日記をつけたりすることは有効です。

相続人の協議でまとまらない場合には、裁判所に協議に代わる処分を求める審判の申立てをすることになります。

 

まとめ

あなたがもしも、夫を亡くした後も義理の父や母と暮らしているなら、彼らの死後のことは彼らが元気なうちに話しておくようにしましょう。

何もしなければ、あなたには遺産は残りません。いま暮らしている家だって、追い出される可能性があるのです。

血のつながった親ですら、死んだ後のことなど話しにくいものですが、あなたの将来の危機にかかわることです。

義父母も、あなたにずっと居てほしいのなら、実は養子縁組を考えていたりするかもしれません。

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司法書士・行政書士 成川修一

司法書士事務所ローライト湘南 代表 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了 研究所研究員、プロギタリストを経て、神奈川県藤沢市で司法書士・行政書士事務所を運営。 相続、不動産、企業法務が専門分野

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