平成30年7月13日に公布された相続法の改正のなかで、遺留分制度の見直しが行われました。
遺留分とは、相続人(兄弟姉妹を除く)が最低限相続できる財産の額のことをいいます。
この遺留分に関する決まりが大きく改正されることになりました。
改正されるのは以下の点についてです。
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- 遺留分の請求を金銭に変えて請求することが可能になる
- 遺留分の金銭の請求について、裁判所へ期限の許与を求められる。
- 遺留分の算定基礎となる生前の相続人への贈与が10年以内に限られる。
具体的に改正点について見ていきましょう。
遺留分侵害額の金銭請求
親の財産を子どもが相続するケースについて例を見てみましょう。
父は既に他界していて、母が亡くなり子どもの兄弟が遺産を引き継ぐとします。
遺産は、評価額が5,000万円の不動産と1,000万円の預貯金です。
兄弟で1/2ずつ相続する権利があるため、遺産総額6,000万円を法定相続分のとおりに相続するならそれぞれ3,000万円ずつとなります。
しかし、遺言書があって、不動産を兄が、預貯金を弟が相続することになった場合、弟には500万円分の遺留分があることになります。
弟は、この500万円分を相続する権利を主張することができます。この主張することを遺留分減殺請求といいます。
現行制度では、この遺留分減殺請求は現物を請求することしかできません。
請求を受けた側が、現物ではなく金銭で支払うことを選択した場合のみ、500万円ならその価額を金銭で支払うことも可能ですが、請求する側はあくまでも現物を請求することができませんでした。
不動産の共有状態が発生すると、持ち分を処分することが難しくなってしまいます。
そこで、複雑な不動産の共有を回避するために、今回の法改正では、不足する分を金銭で請求することが可能になりました。
法改正後は、これを遺留分侵害額の請求と呼ぶようになります。
金銭をすぐに準備できない場合の期限の付与
遺留分侵害額を請求された兄は、500万円を弟に支払わなくてはなりません。
しかし、不動産しか相続していない兄はすぐに金銭で500万円を準備することができないかもしれません。
相続した不動産を売却して金銭を得るのにもある程度の時間を要します。
そこで、遺留分侵害額の金銭請求を受けてすぐに支払いができない場合は、裁判所に対して金銭債務の全部又は一部の支払いについて、期限の許与を求めることができるようになります。
つまり、裁判所に申立をして支払の期限を設けてもらう、ということです。
遺留分の算定方法の見直し
遺留分の算定方法についても、法改正で変わることになります。
現行制度では、相続開始時から1年以内に贈与されたものは遺留分の算定に組み入れるとしていますが、それは第三者への贈与についてです。
もともと相続する権利のない人に対して行われた贈与については1年以内と決められているのですが、相続する権利のある人への贈与は期間が明示されていませんでした。
たとえば兄は生前贈与によってすでに財産を受けていた場合、何ももらっていなかった弟はそれについても遺留分を主張することができます。
それが現行制度では、何十年も前の贈与であっても算定に組み込まれます。
しかし、法改正ではこれについて範囲を限定し、相続開始前10年間にされた贈与に限って算入することになりました。
まとめ
今回の法改正のなかで遺留分に関する見直しが行われたことによって、以前とは違った手続きになります。
公布の日(平成30年7月13日)から1年以内に施行されることになっています。
遺留分の請求は多く行われていますので、改正後のルールをしっかり理解しておきましょう。