遺言書を書きたいが費用がかかるのは困る場合は、自筆証書遺言の作成を検討しましょう。
自筆証書遺言はあなたが単独で作れるお手軽な遺言書です。
紙とペンと封筒があれば作成ができます。
ただし、法律に定められた方式できちんと作らないと無効になってしまいます。
この記事には、自筆証書遺言を作成方法や注意点を書きましたので、遺言書を作る前にぜひ一度読んでおいてください。
自筆証書遺言とは?
自筆証書遺言とは、全文を自分で筆記する遺言書です。
遺言書には以下の4種類があります。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
- 特別方式による遺言書
4種類のうち、公正証書遺言と秘密証書遺言については公証役場という役場で作ることが必要になります。
特別方式による遺言書は、生命の危機にあるとき、船で漂流したときなど特殊な状況下でのみ認められている遺言です。
そういう意味では一番お手軽に作成できるのが自筆証書遺言になります。
自筆で作成するため、必要なものは紙とペンと封筒だけです。
ただし、自筆証書遺言はお手軽な分、相続トラブルにならないよう法律で細かい作成のルールが決められています。
その作成のルールを守らないと遺言書としては無効なものになってしまいます。
自筆証書遺言の作成ルール
遺言書作成には決まったルールがあります。この要件を満たしていないと、遺言書を残しても相続手続きで有効なものとして認められず使うことができません。
遺言書を書くときには必ず確認しましょう。
遺言書作成のルール
- 全文を手書きで書く(財産目録はパソコンでも可)
- 日付を自署で記入する
- 署名・押印をする
- 訂正は定められた方式で行う
全文を手書きで書くこと
遺言書は手書きで書かなければなりません。
ただし、財産目録に限って、平成31年1月13日以降に作成するものはパソコンの使用が可能になりました。
財産目録とは、相続財産が多い場合に財産の一覧を作って遺言書に添付するものです。
以前は財産目録も手書きでなければならなかったので、かなり楽になりました。
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法改正で遺言書の保管がより安全に。作成がより簡単に。
遺言書を書いたけれど、紛失してしまうかもしれない、あるいは、自分の死後に隠蔽されたり偽造されたりするかもしれない、という不安は残ります。 公証役場に行って公正証書遺言とすれば確実ですが、お金も手間もか ...
日付・氏名を書くこと
氏名に関しては戸籍上の氏名以外の雅号・爵位・ペンネーム、芸名などでも筆者を特定できれば有効との判例があります。
日付に関しては和暦でも西暦でもかまいませんが、〇年〇月〇日なのか特定できる日付書き方でなければなりません。
「〇月吉日」といった書き方は日付が特定できないので認められません。
署名・押印
あなたの署名と押印がないものは遺言書として有効になりません。
また、遺言書が複数枚になるときはホチキスで留めて契印を押すようにしましょう。
夫婦連名での遺言書は無効となります。遺言書は1人につき1通作成しなくてはなりません。
訂正は決まった方法で
書き損じをしてしまったとき、修正ペンや修正テープを使ってはいけません。
以下の方法で訂正をしましょう。
①訂正箇所を二重線で消し、その近くに正しい文字を記入する
②訂正した箇所に押印する(二重線の上からではなく、新たに書いた正しい文字の横あたりに押して文字が読めなくならないようにします)
③訂正箇所の欄外に〇字削除、〇字加入と記入し、その下にあなたの署名をする
ただ、訂正の仕方を間違えるくらいなら、最初からもう一度書き直すことをおすすめします。
自筆証書遺言作成で用意するもの
遺言書作成で用意するものは
- 筆記用具と封筒
- 財産の参考資料
になります。
①紙、封筒、のり、ボールペンか万年筆、印鑑
遺言書を書くための紙に決まりはありません。便箋でも、原稿用紙でも問題ありません。封筒も色やサイズなどの決まりはありません。
ペンは、消えないもので書きましょう。鉛筆や消せるボールペンはやめましょう。
印鑑は、認印でも問題ありませんがトラブルを避けるために実印にしましょう。
②預金通帳、登記簿謄本、証券口座の情報がわかるものなど
あなたの財産の情報を把握するために必要です。
記入した内容に誤りがあると遺言書による相続ができなくなってしまいます。
必ず手元に置いて、間違いのないように書きましょう。
自筆証書遺言を無効にしないための4つの注意点
自筆証書遺言を書く場合は、以下の点に注意しましょう。
自筆証書遺言は法律上全文を自署(財産目録は除く)でかかなければなりません。パソコンで文章を作成すると遺言書が無効になってしまいます。
自署で書いた遺言にはきちんと押印します。実はシャチハタ印でも遺言書は有効ですが、インクが経年劣化で退色するので使用は避けましょう。
また、不動産の指定方法を間違えると、遺言書は有効でも法務局で名義変更の手続きができません。
住所などで不動産を書いてはいけません。土地であれば所在や地番、建物であれば所在や家屋番号をしっかり書くようにしましょう。
どのように不動産を記載したらいいのかについては以下の記事を読んでみてください。
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遺言書で不動産の記載はどのようにしたらいいか?
遺言書を書いていくと 「自分の持っている不動産をどのように書いていいか分からないぞ、、、」 「自宅と書いていいのか?、それとも住所を書けばいいのか、、、」 なんて疑問がわいてきます。 実は遺言書におい ...
そして残された家族のためにも、
どのような思いで遺言書を書いたのかといったことや家族への感謝を
付言事項として書いておきましょう。
法的な部分よりも大事なことだと思います。
最もシンプルな自筆証書遺言
自筆証書遺言はルールもシンプルなので以下の様な遺言書でも有効な遺言書となります。
全財産を私の妻に相続させる。
2019年2月26日
氏名 藤沢太郎 ㊞
上記の遺言書はわずか3行ですが、全文自署であればきちんと自筆証書遺言の形式を満たしているので有効な遺言書になります。
もちろん内容に法的な問題は残りますが、争いがなければこの遺言書で各種財産の名義変更などの相続手続きを問題なく行うことができます。
実際に実務上でも、達筆な字で1行だけ書かれた遺言書に遭遇することがありますよ。
自筆証書遺言の書き方のまとめ
自筆証書遺言は最も手軽に書ける遺言書です。
それだけにきちんと法律上のルールを守った記載が求められます。
パソコンで作成したり、日付の記載を忘れたり、押印がなかったりしないように気をつけましょう。
また自筆証書遺言については2020年より法務局での保管制度が始まる予定です。
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法務局の遺言保管制度が2020年から開始。その概要とは?
2018年7月6日、法務局における遺言書の保管等に関する法律が成立しました。 そして、この遺言書保管法の施行期日は2020年7月10日(金)と定められました。来年7月までには、法務局が遺言書を保管する ...
費用をあまりかけずに、より安全な遺言書を書きたいという方は法務局での保管制度を利用しましょう。