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遺言書に書かれた相続人が認知症の場合は相続手続きできるのか?

相続人のなかに認知症の人がいる場合、相続人同士で遺産の分割方法を決める際には代わりに協議をしてくれる成年後見人を選任する必要があります。

では、遺言書が残されていて、認知症の人が相続する場合はどうでしょうか。

たとえば、お父さんが亡くなり、家も土地もお母さんに相続させるという内容の遺言書が残されていたとします。

遺言書が作成されたときは、お母さんも元気だったのでしょう。お母さんが生活するための住まいを残したいと考えてのことだったはず。

しかし、現在ではその母が認知症にかかっているとしたら、相続の手続きはできるのでしょうか。

 

遺言書があっても成年後見人の選任が必要

遺言書が残されていたとしても、相続する人が認知症の場合には、やはり成年後見人を選任しなくてはなりません。

不動産の登記は、相続する人が申請人となって手続きを行ないます。

ほかの法定相続人が代わって手続きをすることはできません。

成年後見人が相続人の代理人となって申請を行なうことになります。

また、相続すると、相続税や固定資産税を納めなければなりません。

認知症だと納税などの手続きも自分で行なうことができないため、成年後見人が代わりに行うことになります。

ポイント

相続人が認知症になってしまうと遺言書があっても名義変更ができない

 

遺言執行者がいても成年後見人は必要か?

遺言執行者が指定されている場合でも、不動産を相続させる人が認知症の場合は成年後見人を選任する必要があります。

遺言書には、遺言執行者が指定されていることがあります。

遺言執行者は、遺言書の内容がきちんと実現されるように、手続きを行なう権限を持つ人です。

家族の誰かを指名することもできますし、手続きをスムースに執行するために銀行や弁護士、司法書士などがなる場合もあります。

遺言執行者がいれば手続きを進めていくことはできますが、不動産登記の申請人はあくまで実際に新たに登記名義人となる人です。

ですので、遺言執行者からの申請を行うことは原則できません。

ただし、相続人ではない人に不動産をあげる遺言を書いた場合は、遺言執行者が名義変更の登記申請を行うことができます。

この場合は、不動産をもらう人が認知症であっても手続きをすることができます。

ポイント

  • 相続  遺言執行者がいても認知症の相続人への名義変更ができない
  • 遺贈  遺言執行者がいれば認知症の受遺者へ名義変更ができる

 

すでに子供が母の成年後見人の場合

認知症の母の成年後見人を子供が行なっているケースはよくあります。

すでに成年後見人が選任されているのであれば、母に代わって遺言書の内容のとおりに登記申請の手続きを進めることができます。

ただし、これは遺言書による相続の場合に限ります。

遺言書が残されておらず、遺産の分割方法について相続人全員で話し合って決める場合(遺産分割協議の場合)には、子供が母の成年後見人として登記手続きを進めることができません。

父の財産を母と子供で分けるのに、母の代わりを子供が行なえば、子供が自分の利益だけを優先することもできてしまうからです。

こういった場合には、家庭裁判所に申し立て、子供に特別代理人を立てます。

また、成年後見人である子供に後見監督人が付いている場合には、特別代理人を立てなくても手続きをすることができます。

 

相続人が認知症の時の相続対策とは?

相続人が認知症になってしまった場合には、原則、成年後見制度を利用することになります。

通常の遺言書ではスムーズに相続させるということは難しいです。

こうしたケースに関して成年後見制度を使いたくない場合の有効な対策としては、

「遺言による信託」

があります。

認知症の相続人の代わりに財産の管理をする人を遺言書で指定して、その相続人のために管理をしてもらいます。

これは、金融機関の商品の「遺言信託」とは全く違うものですので注意してください。

遺言による信託は専門的な話になりますのでお困りであれば個別にご相談ください。

 

まとめ

遺言書は書いたときと状況が変わっていることもあります。状況の変化に応じて書き直した場合は、新しい内容が有効とされます。

遺言書のとおり認知症の母が相続するより、成年後見人を立てたうえで遺産分割の話し合いをしたほうが手続きが楽だった、ということも起こり得ます。

しかし遺言書があれば遺言書が優先されますので、家族に認知症の兆候が表れたときなどに、親の考えている相続計画を見直す必要がないか、ぜひ話し合ってみてください。

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