「おひとりさま」が増えているなか、遺産の相続人が不在で国庫に納められた財産の総額は、2017年度で約525億円だそうです。
「おひとりさま」の相続について、気をつけたいことをまとめました。
あなたの相続人を確認しよう
妻や子、親がいないからといって、あなたの財産を相続する人がいないとは限りません。
相続人には相続権の順位があり以下のように決まっています。ちなみに離婚した配偶者は相続人となりません。
相続人になる可能性のある親族
第1順位 子および代襲相続人※
第2順位 両親などの直系尊属
第3順位 兄弟姉妹および代襲相続人※
子(または子が亡くなっている場合の孫※代襲相続人)がいる場合は優先的に相続人となります。
- 離婚して一緒に暮らしていない子
- 認知をした子
などがいる場合はその子が相続人となります。
認知についてはあなたの死後遺言書によって行うこともできます。
子がいない場合で、親や祖父母が生きているのであれば、親が相続人となります。
子や孫、親や祖父母がいない場合には兄弟姉妹が相続人となります。
もし、兄弟姉妹があなたが亡くなるより前に亡くなっていれば、彼らの子供、つまり、あなたの甥や姪が相続人(※代襲相続人)となります。
兄弟姉妹も甥も姪もいない、となったとき、はじめて「相続人がいない」と言えます。
兄弟姉妹が本当にいないとは限りません。実は親が認知した子があなたの他にもいた場合、その人が相続人となります。
戸籍を取ってきちんと調べておきましょう。
※本来の相続人が亡くなっていることで子が相続権を受け継ぐこと
相続人がいないとどうなるのか
相続人がいないことを「相続人不存在」と言います。
相続人不存在となったときは、相続財産管理人が選任され家庭裁判所で長い時間をかけて手続きをしていくことになります。
相続財産管理人が選任される
相続財産管理人とは、亡くなった人の財産を管理したり負債の清算を行う人です。
利害関係人(亡くなった人が借入をしていた場合の債権者など)や検察官が家庭裁判所に相続財産管理人選任の申し立てを行ないます。
家庭裁判所は、相続財産管理人を確定するまでの間に度々の公告によってあなたの相続人や債権者を探します。
このため、相続財産管理人が決まるまでには時間がかかります。
具体的には、以下の流れで相続財産管理人を選任します。
相続財産管理人の選任の流れ
①相続財産管理人選任の申立
亡くなった人の利害関係人や検察官などによる申立。
②相続財産管理任選任の公告
家庭裁判所は、相続財産管理人が選任されたことを公告するとともに、その公告によって相続人が現れるのを待ちます。待つのは2か月です。
③相続財産管理人による債権申出の公告
上記②から2か月経過しても相続人が現れなければ、相続債権者と受遺者(遺言によって財産を受け継ぐことになった人)に対する請求申出の公告をします。
相続債権者や受遺者が現れるのを待つと同時に、相続人が現れるのも引き続き待ちます。この期間は2か月以上と決まっています。
④権利主張催告の公告
上記③の日にも相続人が出現しない場合は、相続財産管理人の請求によって、家庭裁判所は6ヶ月以上の期間を定めて権利主張催告の公告をおこないます。
⑤相続人不存在となる
上記を経てそれでも相続人が現れない場合には、「相続人不存在」となります。
なお、相続財産管理人には報酬を支払う必要があり、遺産から差し引かれます。予納金として数十万から百万程度支払うことがあります。
特別縁故者に財産分与される
特別縁故者とは、「相続人不存在」が確定した場合に、特別に相続を受ける権利が発生した人です。
以下の人が、特別縁故者に当てはまります。
特別縁故者となる人
①生計をともにしていた人(内縁の妻や夫、事実上の養子)
②療養看護に努めた人(報酬を得て行っていた人は除く)
③親兄弟のように親密な関係であった人
上記①②に当てはまらなくても、それらに準ずる関係にあった人は特別縁故者として認められるケースがあります。
「相続人不存在」となった場合に、家庭裁判所が認めることによって特別縁故者への財産分与が可能になります。
しかし、相続人不存在になったら自動的に特別縁故者が決まるわけではありません。
特別縁故者になるには本人が家庭裁判所に申し立てを行ないます。
そしてその前に、相続財産管理人が選任されている必要がありますので、自分は亡くなった方の特別縁故者だと思う人は、利害関係人として相続財産管理人選任の申立を行なうことになります。
この時点で、家庭裁判所が特別縁故者として認めてくれるかどうかはわかりません。
もし、おひとりさまで周囲に特別縁故者にあたる人がいて財産を残したいのであれば、遺言書を残しておきましょう。
国庫への帰属
特別縁故者もなく、誰も遺産を相続する人がいないと、国庫に帰属することになります。
国庫に納付するための手続きは、相続財産管理人が行ないます。
おひとりさまの相続は周りに大変な迷惑がかかる場合も
おひとりさまの相続手続は相続財産管理人の選任をしたり、家庭裁判所で手続きをしたりと大変な手間と時間かかります。
相続財産管理人の申立をするだけでも数十万~100万円以上の費用が必要です。
親しい間柄の人や地主さんなど死後の手続きの負担を周りにかけないためにも相続についてはきちんと考えてください。
おひとりさまの相続対策としてすべきこと
あなたがおひとりさまの場合には、次の点について準備をしてください
おひとりさまの相続準備
- 相続人がいるのかいないのか、誰が相続人となるか調べておく
- 預貯金、不動産、株式など財産についてきちんとまとめる
- 遺言書を書く
- 必要のない財産は処分し、借金などがある場合は早めに返済しておく
- あなたの死後の事務手続きについて親しい人や専門家へ頼んでおく
まとめ
家族もいないし、自分が死んでも遺産相続なんて発生しないと安心していませんか?
まずは、あなたの財産は何がどれくらいあるのか、きちんと把握しましょう。
そして、相続人が本当にいないのか、確認しましょう。
お世話になった人に財産を残したいと考えているなら、必ず遺言書を書きましょう。
おひとりさまだとしても相続についてやっておくべきことは多いです。
早めに準備しておきましょう。