亡くなった方が遺言を書いていない相続の場合、通常は財産の分け方を決めるために遺産分割協議で話合いをすることになります。
この時に注意しなければいけないのが未成年者の存在です。
未成年の子は一人では財産に関する法律行為を有効に行うことができませんから、通常は親が代理します。
しかし、親も相続人であるときには親が一方的に自分が有利なように財産の分け方を決めることができてしまいます。
一見何の問題もない行為のように見えますが、法律的には問題が生じます。
このような未成年者がいる場合の相続ではどのような手続きが必要になるかを解説したいと思います。
未成年者との遺産分割協議では親は家庭裁判所に「特別代理人」の審判を申し出る
遺産分割協議で未成年の子供のために、相続人である親が未成年者を代理することはできません。
子が得るはずの財産を不当に親が得てしまう可能性があるからです。
親のこのような行為を「利益相反取引」といいます。
例え、子供のためを思って子供に有利な分け方をする場合でも「利益相反取引」にあたってしまいます。
あくまで相続人である親が子供の相続について代理して話合うという見た目で判断することになります。
ですので、親権者は新たに子供に代わって遺産分割の話合いをしてくれる人を裁判所に選んでもらわなくてはなりません。
そのために家庭裁判所に対して「特別代理人の選任の申立て」という手続きをしなければなりません。
家庭裁判所への手続の仕方
特別代理人を家庭裁判所に選んでもらうには
特別代理人選任申立書
を管轄の家庭裁判所に申請します。
特別代理人選任申立書は各家庭裁判所のHPからダウンロードができます。
以下は申立書の記載例です。
特別代理人には、通常子の財産状態や家庭環境に詳しく、子供の利益を十分配慮できる親族等を選びます。
申請ができる人
申請ができるのは原則親権者です。
ただし、民法第840条の類推適用により、未成年者、未成年者の親族その他の利害関係人も申請ができます。
提出先
子の住所地を管轄する家庭裁判所。
添付書類
- 親権者及び子(未成年後見人及び未成年被後見人)の戸籍謄本
- 特別代理人候補者の戸籍謄本、住民票
- 遺産分割協議書案
費用
- 収入印紙 800円分
- 予納郵券(切手) 各家庭裁判所で指定される額
特別代理人の注意点
特別代理人は2人以上の子供を代理して遺産分割協議を行うことはできないので注意が必要です。
また、子供に未成年後見人がついている場合で、未成年後見監督人がいる場合は未成年後見監督人が代理で遺産分割協議を行うので、特別代理人選任の申立てを行う必要はありません。
無効な遺産分割協議とならないように未成年者がいる場合には注意しよう
未成年者が遺産分割協議に参加するには注意が必要です。
もし特別代理人の選任を忘れてしまって遺産分割協議をした場合は、
- 子が成年に達してから追認をする
- 事後に選任された特別代理人が追認する
といった行為がない限り遺産分割協議は有効に成立しません。
つまり相続手続きが行えないということです。
相続に未成年者が関係してきた時は要注意ですね。