ジャニーズ事務所のジャニー喜多川社長が亡くなり、大きなニュースとなりましたね。
会社の経営者をしている夫が亡くなったときの相続とは、どんなことが発生するのでしょうか。うちの夫にはジャニーさんみたいな莫大な財産はないから大丈夫、と安心していてはいけません。
きちんと話し合い、相続対策をしておかないとトラブルになる可能性があります。
会社を経営している場合は生前にしっかり話し合って準備しておきましょう。
会社経営者の相続手続き
会社経営者が亡くなった場合には、相続に関して以下の事項に注意が必要です。
ポイント
- 相続税
- 会社の株式
- 会社の借金
- 会社使用の不動産
上記の財産については、相続が起こってからなるべく早くにすべて把握しておかなければいけません。
3か月以内に相続するか、放棄するかを決めなければならないからです。
会社に借金がある場合だけでなく、多額の財産が残った場合も危険な状態です。
最悪の場合一生かかっても払いきれない借金や相続税の支払い債務を背負わされることになります。
また事業を継続しない場合は、会社をたたむ清算の手続きが必要になります。
相続対策をしておかないと、何も知らない会社の清算手続きを相続人がすることになり大変な苦労を強いられます。
事業の継続、承継、終了についても経営者は考えておかなければいけません。
株式相続のリスク
株式の相続については以下の点に注意が必要です。
- 換金性がないのに相続税がかかってくる
- 株式価値の評価が専門的で難しい
- 相続人に分散してしまうと会社経営が不安定になる
株式の相続での注意点
ジャニーズ事務所も実は、株式会社ジャニーズ事務所という名称で株式が発行されている会社です。
相続人はジャニーズ事務所の株式の相続をすることで、会社が所有している莫大な財産を相続をすることになります。
この場合は、ジャニーさんの個人の財産と会社の財産すべてを合わせたものに相続税がかかってきます。
たとえば500億の財産があったとすると、最高税率の55%が適用されるので275億ほど現金で相続税を納めなくてはいけなくなります。(※実際には控除等で上記の金額より支払額は少ないです)
株式会社ジャニーズ事務所は上場していない会社ですので、株式市場で売却することができません。
ジャニーズ事務所は有名な会社なので株式を買いたいという人はいるかもしれませんが、普通の会社は、そうはいかないです。
株式を売って換金できないのに、相続税では現金を用意しなくてはいけないという事態が発生します。
こうした会社の場合は、
- 生前の株式の贈与
- 納税資金の準備
といったことが必要になります。
会社の経営に与える影響
株式会社の場合、オーナー経営の会社では、代表取締役である社長1人がすべての株式を保有しています。
社長の夫が亡くなったときに遺言書を残していないと、この株式が相続人に法定割合通りの振り分けがされてしまう可能性があります。
株式が分割されてしまうということは、会社の所有権が分散することを意味します。
株式の保有数が多いほど会社の重要事項の議決権が大きくなりますので、会社の経営に関係なかった親族に株式が渡った結果、もめごとが起きる場合があります。
こうした事態を防ぐためには、生前に株式を後継者へ贈与するか、遺言書を残して株式の相続人を決めておきましょう。
また、非上場の株式の場合は相続税の概算を計算しておきましょう。
基本的に黒字の会社は、出資をした時の金額より相続税の計算上の評価額が大幅に高くなります。
1億を超える年商で継続的に黒字の会社は注意が必要です。
非公開株は市場取引相場がないため、特殊な計算方法によってその株価を評価し、それに対して相続税が課税されます。
非公開の自社株は基本的に売却することが困難です。不動産であれば、相続税を支払うためにそれを売却してしまうことも可能ですが、株式の場合はそうはいきません。
相続税のことも考慮したうえで、相続するべきか、生きているうちに段階的に贈与するか、検討しておくとよいでしょう。
会社で使用している不動産
会社の事業所として使用している不動産の所有者が、会社名義ではなく夫個人の財産である場合には、その不動産についても遺言書を残しましょう。
遺言書がないと、不動産の所有権が相続人に分割され、事業経営とは関係ない人によって勝手に売却されてしまう危険もあります。
事業所の不動産名義が会社名義なのか、個人名義なのかは確認しておきましょう。
会社名義であれば、たとえ社長が亡くなっても相続の対象とはなりません。
また、事業用に使用している車やその他の資産についても、夫個人の名義になっているものがないか確認し、漏れのないように遺言書に残してもらうようにしましょう。
前項のとおり、株式の相続には現金の用意が必要となりますし、不動産の評価額も高い場合にはその分、相続税も高くなります。
会社の負債「連帯保証人」
金融機関から運転資金などを借り入れる際に社長個人が会社の「連帯保証人」となっているケースがほとんどです。
会社の負債そのものは相続の対象ではありませんが、連帯保証人の地位は相続の対象となります。
相続人は相続放棄をしない限りは、会社の借金を支払う義務あることになります。
連帯保証なので債権者も会社ではなく相続人に直接請求してもいいことになります。
会社自体に借金の支払い能力がない場合は
会社に支払い能力がなく、連帯保証人として借金を支払うことができない、という場合は裁判所を通じた相続放棄を検討することになるでしょう。
相続放棄すれば借金を支払う義務はなくなりますが、同時に夫が持っていたプラスの財産も含めた全てを放棄することになります。
相続放棄するときは慎重に検討しましょう。
まとめ
会社のことは夫に任せているから、といまは安心していても、いざというときに何がどうなっているのかさっぱり分からず途方に暮れてしまうかもしれません。
経営者の相続に関しては、相続税が高額になりがちですし、株式評価や経営権の承継、会社の清算手続きなど専門的な知識がないと難しい手続きが多く発生します。
なるべく早めに話し合い、財産をどうすればよいのか、どうすれば死後も家族が安心して暮らせるのか、従業員が安心して働けるのかといったことを考えておきましょう。