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【解説】相続時に知っておくべき遺産分割協議のやり方

親が亡くなったときに遺言書があれば遺言書の指定のとおりに相続を行います。

しかし、遺言書がない場合は、民法で定められた割合で相続するか、相続人全員で話し合いをして遺産を分けます。

実際の相続の場面では相続人全員での話合いがほとんどです。

相続人同士で誰がどの遺産をどのくらいの割合で相続するのか、話し合うことを遺産分割協議といいます。

話し合いがまとまったら協議した内容を書面に残し、その内容に相続人全員が合意したことの証としてそれぞれが署名、捺印します。この書類が遺産分割協議書です。

遺産分割協議書がないと、相続の手続きができません。

話し合いで決めるだけでなく、後々のトラブルを防ぐためにきちんと書面にすることが必要です。

遺産分割協議についての知識をもって相続に備えておきましょう。

 

 

1.相続人は誰か?を確認する

遺産分割協議では、相続人「全員」が合意しなければなりません。

このため、協議を始める前に誰が相続する権利をもった人なのかを調べる必要があります。

自分では「これで全員」と思っていても、調べてみたらそうではなかった、ということもあります。

例えば、離婚前の子どもが相続人になっていたり、相続対策のために孫を養子にしていたり、隠し子を認知したりして思わぬ人に相続する権利が発生するケースは結構あります。

 

法律で決められた相続人の範囲

まず、法律で定められた相続人の範囲を整理しましょう。

亡くなった方の配偶者は常に相続人となります。それ以外の順位は下記のとおりです。

第1順位 子供(子供が死亡している場合等は孫)
第2順位 父母(父母が死亡している場合等は祖父母)
第3順位 兄弟姉妹

つまり相続人の範囲は、配偶者+順位の一番高い人となります。

第2順位は、第1順位がいないとき、第3順位は第1順位も第2順位もいないときに相続人となります。

例えば両親が他界していて子どものいない夫婦の場合、夫が亡くなったあと相続人となるのは妻だけではなく、夫の兄弟姉妹も相続人となるのです。

 

 

2.亡くなった方の戸籍謄本を取得する

きちんと相続人を特定するためには、亡くなった方の出生から死亡まで途切れることなく全ての戸籍謄本を取得しなければなりません。

出生から死亡まで、と言ってもどれから集めればよいか迷ってしまうかもしれません。

まずは、直近の戸籍謄本から取得することをお勧めします。

戸籍謄本は住所地の役所ではなく「本籍地」の役所へ請求します。

相続の手続きには亡くなった方の名前が除された住民票が必要となります。この住民票を取得する際に、本籍地記載のものを取得するようにしましょう。

最後の本籍地の役場に戸籍謄本を請求し、そこから遡っていけば抜け漏れなく集めることができます。

戸籍は、結婚や転籍等による除籍・入籍があればその分だけ謄本が書き換えられます。
例えば、婚姻により転籍した場合は、従前はどこに戸籍があったかも記載されていますので、次はその従前戸籍がある場所の役場に謄本を請求することになります。

また、本人が何もしていなくても戸籍法改正により戸籍が作り直されていることがあります。
その場合は、作り直された後の新しい戸籍と作り直される前の古い戸籍(改製原戸籍)の両方を取得する必要があります。

戸籍謄本をすべて集めることは結構手間ですが、これがないと遺産分割協議が相続人全員で行われたことの証明ができないのです。

戸籍謄本が一つでも欠けていると不動産の名義変更や銀行の預金の引継ぎの手続きが進みません。

亡くなった方が離婚や再婚をしているケースなどは、複数の役場に謄本の請求をしなくてはならず時間も手間もかかるので、早めに取り掛かりましょう。

相続人が決まったら、相続人それぞれの戸籍謄本も必要になります。相続人が生きていることを証明するための書類なので、現在の戸籍謄本を取得すればOKです。

 

 

3.相続人全員で協議する

相続人全員で、誰がどの遺産をどのくらい相続するかを協議します。

話し合いの手段は特に定められていません。全員がどこかに集まらなくても、電話やメールなどを利用することも可能です。

話がまとまったら、その内容を遺産分割協議書に記し、相続人全員が署名・捺印します。

捺印の際には、印鑑登録している印鑑を使用しなければなりません。
相続人は戸籍謄本だけでなく印鑑証明書も取得しておきましょう。

不動産を相続することが決まった人は、住民票も用意しましょう。相続による不動産の名義変更で使うことになります。

亡くなった方も死亡が記された住民票が必要となります。

集めなくてはならない書類をまとめると、下記の表のとおりです。

不動産を相続する場合には、手続きにあたって土地や建物の固定資産評価証明書も必要です(固定資産評価通知書でも可能)。

なお、遺産分割の協議をせず、民法で定められた割合で遺産分割する場合は法定分割といいます。
法定分割の際の相続割合は下記のとおりです。

遺産分割協議をする場合は、法定分割の割合に従う必要はありませんが、話し合いの際の目安とするのもよいでしょう。

相続人が配偶者のみ・・・全部
相続人が配偶者と子供・・・配偶者1/2、子供1/2※
相続人が配偶者と親・・・配偶者2/3、親1/3
相続人が配偶者と兄弟・・・配偶者3/4、兄弟1/4
相続人が子供のみ・・・全部
相続人が親のみ・・・全部
相続人が兄弟のみ・・・全部

※子供が複数いる場合は、1/2を人数で分けます。例えば、子供が3人いる場合は、1/6ずつになります。

 

 

4.遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書に決まった書式はありません。手書きでもパソコンでもどちらで作成しても構いません。

但し、相続人の署名は手書きのほうがよいでしょう。

下記のサンプルは、鈴木太郎さんが亡くなり、戸籍謄本をすべて集めた結果、相続人は配偶者の花子さんと子の一郎さんというパターンです。

そこで2人で協議し、太郎さんが所有していた不動産と預貯金を一郎さんが相続することになりました。

これは比較的シンプルな相続ですが、相続財産の数が多かったり、一つの財産について〇%はAさんが、〇%はBさんが取得するといった分割方法を取るなど、複雑になる場合もあります。

遺産分割協議書は相続人間における契約書であると同時に財産相続の証明書の性質を持つ文書であるため、専門家に任せたほうが安心です。

特に財産の分け方によっては相続に関する税金も大きく変わったり、不動産の名義の入れ方であとあと大きな問題になったりするので、税理士や司法書士に相談しましょう。

相続財産が少なく、相続人も少ないため自分で作成するという場合は、以下の点に注意して作成してください。

・タイトルは「遺産分割協議書」とする
・被相続人(亡くなった方)の名前、生年月日、死亡年月日、本籍を記載する
・遺産分割協議に参加した人を明確にする
・遺産の内容を詳細に具体的に記載する(不動産については登記されている内容のとおりに記載する)
・どの遺産を誰が相続するのか記載する(割合を決める場合はその割合)
・協議の日付を記載する
・相続人はそれぞれ、住所、氏名を自著する
・相続人はそれぞれ、印鑑登録している実印で押印する

 

 

まとめ

遺産分割協議書がないと相続の手続きができません。

相続の手続きをせずに遺産を宙ぶらりんのままで放置すると、その間に相続人が死亡してしまって手続きが複雑になる、遺産を勝手に誰かに売却されてしまう、等々、徒労やトラブルの原因になります。

遺産分割協議をなるべく早く開始できるよう、被相続人の戸籍謄本の取得や遺産の特定を早めに着手するようにしましょう。

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