相続前後に一時的に親の口座からお金をおろすということはよくあります。
しかし、やりすぎると遺産隠しとみなされ相続税の脱税行為と税務署にみなされる場合があります。
この記事では
- 過去に遺産隠しとみなされた事例
- 遺産隠しとみなされた場合のペナルティ
- 遺産隠しとみなされないための注意点
について書いてみたいと思います。
相続前に口座からお金をおろしたのが遺産隠しとみなされた事例
愛媛県の医師の事例ですが、
- 2013年から3年に渡り、母親名義の口座から50~90万円を何度も出金し、自分の口座に移したり、自宅の金庫に保管した
- 国債を現金化して生前に自分の口座に移した
といったことで相続税法違反の容疑で国税局に告発された事件があります。
相続前に多額のお金を親の口座から自分の口座に移して相続税の申告を行わなかった事例です。
この時には、1億1700万円の脱税と認められ、4700万円の重加算税の支払いが生じています。
生前に現金をおろしてどこかの金庫に隠して相続税を免れようとする行為は
悪質とみなされ相続税法違反となります。
税務署は、亡くなった親だけでなく相続人の口座もすべて流れが追えるので
基本的に遺産隠しをしてもばれます。
国税庁の統計によると、相続税の脱税額は年間数百億円も把握されています。
このような行為は絶対に行わないようにしましょう。
遺産隠しとみなされた場合のペナルティ
まず相続税の脱税行為は犯罪となります。
相続税を偽って不正に申告し、正規の金額を納めない行為は、
- 10年以下の懲役
- 1000万円以下の罰金
- 上記2つの併科
に処すると法律で決められています。
実際に遺産隠しをした人は犯罪者になってしまうということです。
犯罪者になれば、職や社会的地位、資格を失ったりしますので計り知れないダメージがあります。
また、刑罰だけでなく税務署から延滞税や重加算税という金銭面でのペナルティがあります。
延滞税 : 納付税額 × 年7.3%(2か月以降は14.6%)
重加算税: 納税税額 × 35%(無申告加算税の場合40%)
という非常に重たいペナルティになります。
申告から1年ほどたって遺産隠しがばれた場合、相続税は1.5倍近く取られる計算になります。
また、このペナルティについては遺産隠しをした人だけでなく、他の相続人も支払い義務を負うことになります。
相続は代表者に任せていたから知らないといっても、その人が相続税の申告に失敗すれば
多くのお金を追加で支払う必要が出てきてしまします。
以下の表は平成29年度と平成30年度の国税庁の相続税に関する調査実績です。
税務署が相続税の調査にきた場合は、85%が申告の間違いを指摘され
約15%もの割合で重加算税が課されています。
税務署の職員は重加算税をとると昇進の評価項目になっています。
そういう意味では遺産隠しは税務署からは恰好の調査対象となります。
ですので親の口座から継続的に資金移動をするのは大きなリスクがあるのです。
遺産隠しとみなされないための注意点
税務署から遺産隠しと言われてしまうケースとしては、
- 親の口座から必要もないのに複数回にわたって資金移動をしている
- 資金移動をおこなっているのに相続税の申告書に書かない
- やり方が税務署を欺こうとしていて悪質
といった点があげられます。
基本的に、親の口座から安易な資金移動は避けましょう。
実際、相続税法違反となった医師のケースでも「母親から頼まれて保管していた」と主張しましたが
主張は認められませんでした。
また「相続税の節税の新しいスキーム」や「生前対策の商品」には、
上記の点問題がないかよく検討する必要があります。
金融機関や税理士事務所から提案されるものであっても、過去には遺産隠しとみなされたケースは多くあるので注意しましょう。
相続税申告を行う税理士のレベルも様々なので、
- 申告実績件数
- 担当者が専門家であるか
- 説明の内容
- 案件に対して適切な事務所から
など依頼する場合は色々な観点から探されるといいですね。
まとめ
相続税の申告において遺産隠しとみなされることは致命的です。
相続前に親から財産をもらった場合はきちんと記録しておきましょう。
また、他の相続人が遺産隠しをしているのではないかといった場合は、
第三者に遺産を調査してもらうといった対応を取るのが安全です。
相続税の申告時には、親の口座から移動したお金も含めてきちんと申告するようにしましょう。