相続手続きでは、不動産を売却してお金に換えてから相続人で分けることも
良く行われています。
相続不動産の売却は、一般的に不動産業者へ依頼しますが、
相続手続きの前に媒介契約をお願いされることがあります。
名義が変わっていないのに不動産屋さんへ売却依頼をしてしまって大丈夫なのかということについて解説してみたいと思います。
相続の名義変更前に不動産売却依頼ができるのか?
相続の名義変更前に相続不動産の売却を依頼することはできます。
実際、普通に行われている契約です。
不動産屋さんに売却を依頼することを「媒介契約を結ぶ」といいますが
その媒介契約を相続人全員又は相続人の代表者が不動産業者と契約を結ぶことになります。
ただし、不動産業者側からだと、本当にその人に売却権限があるのか登記簿から分からないので一定の準備が必要になります。
相続手続き前に売却依頼するため必要なこと
相続手続き前に売却依頼をするためには、以下のことが必要です。
- 相続人が確定していること
- 相続人全員が売却に同意していること
相続人が確定しているとは、相続権をもった人全員が判明している状態をいいます。
亡くなった人の戸籍を出生から死亡まで集めて、
家族以外に認知している子がいないか
前妻の子がいないか
養子にしている人がいないか
などを調べます。
調査の結果、思わぬ相続人がでてくることはたまにあります。
こうなると売却にはその相続人の同意も取る必要がでてきます。
相続不動産の売却に相続人全員の同意が必要になるのは、
民法に以下のような規定があるからです。
第898条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
第251条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
きちんとした不動産業者であれば、
- 遺産分割協議書の内容、相続人全員の実印の押印がある
- 遺産分割協議書がなければ戸籍等で相続人全員が確定している
という確認をします。
この確認を怠ると売却側の不動産業者もあとあと調査義務違反を問われる可能性があります。
売却を考えるのであれば、最低限不動産について遺産分割協議までは終わらせておきましょう。
売却を依頼するときの注意点
相続手続き前に売却依頼をするときに絶対してはいけないのが、
勝手に相続人の代表者として不動産屋と媒介契約を結んでしまう
ことです。
勝手に手続きを進めることほど、他の相続人の反感を買う行為をありません。
いくら売却するのが当然の状況の様に見えても
相続手続きにおいては必ず全員の合意のもと一つ一つ手続きを進めていきましょう。
あとで遺産取り分について争いがおこって協議が整わなかった場合は
買主に多大なる迷惑がかかることになります。
また、売却依頼をしたらすみやかに相続手続きを進めることが大切です。
実際の不動産の売却手続きをするために、相続による名義変更は終了していなければなりません。
媒介契約後、思った以上に早く取引が進んでしまうケースもありますので
相続手続きに慣れていないのであれば、司法書士へ名義変更を依頼しましょう。
まとめ
相続手続き前に売却依頼を出しておくことができます。
売却代金を相続税の支払いに充てたり、全体を手続きスムーズに進めることができるので
検討するのもいいと思いますが、
- 戸籍を収集して相続人全員の確定をする
- 相続人全員で不動産の売却について合意をしておく
といった作業は必ず行っておくようにしましょう。