2018年7月6日、法務局における遺言書の保管等に関する法律が成立しました。
そして、この遺言書保管法の施行期日は2020年7月10日(金)と定められました。来年7月までには、法務局が遺言書を保管する制度が開始します。
法務局に遺言書を保管してもらうメリットとは何でしょうか。
法務局での遺言書保管制度は、遺言を残すあなたにとっても、残された家族にとってもメリットのある制度です。
法務局での遺言保管制度とは?
今まで遺言書を保管する場所といえば
- 公証役場(公正証書遺言)
- 金融機関(遺言信託)
- 貸金庫
- 自宅
といった場所でした。
これに加えて法改正によりあらたに
- 法務局
が加わることになります。
法務局で預かる遺言書は自筆証書遺言となります。
自筆証書遺言について、初めて公的な機関での保管がされるという点で大きな法改正になります。
自筆証書遺言の問題点
自分で書いた遺言書を自宅で保管している人も多いのではないかと思います。
しかし、そのように作成・保管されている自筆証書遺言には以下のような問題もあります。
自筆証書遺言の問題点
- 紛失してしまう、見つけてもらえない
- 相続人に廃棄されたり隠蔽される
- 相続トラブルになりやすい
- 検認が必要
紛失してしまう、見つけてもらえない
まず、保管中に紛失してしまう可能性があります。
あなたが元気で自宅で管理していれば、紛失することはないかもしれません。
しかし、入院したり介護施設に入居することになったりして、いつのまにかどこかに紛れて失くなってしまうかもしれません。
あなたの死後、相続が発生したときに誰にも見つけてもらえない可能性もあります。
相続人に廃棄されたり隠匿される
遺言書を見つけてもらえたとしても、相続人に勝手に開封されてしまうかもしれません。
もしも遺言書の内容がその人にとって都合の悪いものだったとしたら、廃棄されたり隠匿されてしまう可能性があります。
そうすると遺言書はなかったことになってしまい、遺言書がない場合は、相続人全員で遺産をどのように分割するかの話し合い(遺産分割協議)がもたれることになります。
あなたの意思とは全く異なるものになるかもしれません。
相続トラブルになりやすい
あるはずの遺言書が見つからないと、相続人同士で誰かが隠したのではないかと疑うなどのトラブルにつながります。
検認が必要
自筆の遺言書は、見つけた人は開封せずに家庭裁判所に持っていき、検認を受ける必要があります。
家庭裁判所が遺言書を開封し、日付、筆跡、署名、本文、訂正箇所の署名や捺印の状況や遺言書の内容を確認してから検認調書を作成します。
この時、遺言書の記載内容に不備や不足があると検認されません。
検認を受けていない遺言書では、不動産の相続登記手続きや銀行の名義変更手続きを行なうことはできません。
遺言書の法務局での保管の仕方
あなたが法務局に遺言書の保管を申請すると以下のような流れになります。
1.遺言書の作成
法務局の指定の様式で遺言書を作成する必要があります。
様式はまだ公開されていませんが、施行とともに定められる予定です。
様式のとおりに記入すれば、漏れや不備の可能性が低くなります。
なお、遺言書保管を申請する際には手数料がかかります(手数料の料金はまだ公表されていません)。
2.法務局への申請
あなたの住所地、本籍地、所有する不動産の所在地を管轄する法務局であれば、どこでも申請することが可能です。
なお、申請するときには必ず本人が法務局に出向く必要があります。
その際に、本人確認が行われます(本人確認に必要な書類はまだ公表されいていません)。
3.遺言書の保管
保管の申請がされた遺言書は、法務局内で原本が保管され、同時に画像データでも保管されます。
保管されたデータは、あなたはいつでも閲覧することが可能です。
ただし、あなたが生きているうちは、あなた以外の人はたとえ家族であっても閲覧することはできません。
また、遺言書の保管を撤回することもできます。撤回すると、法務局で保管されていた遺言書は返却され、画像データも消去されます。
なお、遺言書の保管の申請や保管している遺言書の閲覧には、それぞれ手数料がかかります。
ポイント
- 遺言書は所定の様式で作成する
- 本人以外は保管の申請はできない
- 遺言書保管の撤回も可能
- 遺言書の保管・閲覧には手数料が必要
相続人による閲覧
あなたが亡くなった後には、以下のような手続きが行われます。
1.遺言書情報証明書の交付請求
あなたの相続人は、あなたが亡くなったら遺言書を確認する必要があります。
法務局に行って(あなたが遺言書原本を預けている法務局でなくてもかまいせん)、遺言書の画像データの閲覧を請求します。
この遺言書の画像データを、遺言保管書情報証明書といいます。
あなたが遺言書原本の保管を申請した法務局であれば、原本を閲覧することも可能です。
なお、まだ案内されていませんが、相続人が遺言書の内容を確認する際には戸籍謄本など、相続人であることが証明できる書類を持参するようになると考えられます。
2.相続人への通知
相続人の誰かが遺言書の画像データや原本を閲覧したら、他の相続人全員に対して法務局が通知します。
この通知によって、他の相続人は遺言書の存在を知ることができます。
最初に遺言書を見た人が遺言書を隠したり廃棄したりすることを防げます。
3.検認は不要
保管の申請の際に、すでに記入した様式内の不備についてチェックを受けているので、家庭裁判所で検認を受ける必要はありません。
検認は、家庭裁判所に検認の申立をしてから1か月程度かかります。
検認が不要になるため素早く相続手続きに着手することができます。
まとめ
まだ施行されておらず遺言書を法務局で預かってもらえるのはこれからですが、自筆遺言を残す予定なら公的機関である法務局での保管を活用しましょう。