親が認知症になった場合、預金の出し入れや施設の契約のために成年後見制度を利用することがあるかもしれません。
親の財産を管理する成年後見人に家族がなりたいという希望が多いです。
ただし、親が認知症になってしまった場合、法定後見制度が適用され家族が成年後見人になれるとは限りません。
確実に家族が親の後見人になるためには、親が認知症になる前に任意後見制度を利用する必要があります。
家族が確実に後見人となれる任意後見制度について解説したいと思います。
任意後見制度とはどんな制度か
成年後見制度には、
- 法定後見制度
- 任意後見制度
の2つの制度があります。
法定後見制度とは?
法定後見制度とは、認知症によってすでに判断能力が低下している人に対して適用される制度です。
当然、判断能力が低下している本人が、誰を後見人とするかは選べませんので、裁判所が後見人を選任することになります。
家族を候補者として申立をすることは可能ですが、実際には弁護士や司法書士などの専門家が選任されることがほとんどです。
内閣府から発表されたデータによると平成27年において親族が後見人とされたものは全体の30%に満たない数値となっています。
任意後見制度とは?
任意後見制度は、認知症になってしまった時に備えて、本人がまだ元気なうち(判断能力のあるうち)に契約を結ぶもので、本人が信頼できる人を選んで依頼することができます。
任意後見制度は以下のような流れで利用します。
・後見人になってほしい家族と話し合い、契約の内容を決めます。
↓
・契約内容を、公証役場で公正証書にします。
↓
・認知症の症状が見られるようになったら、裁判所に申立をします。
↓
・裁判所が任意後見監督人を選任します(後見人が契約を履行しているかチェックします)
↓
・後見人は任意後見契約で決められた、財産管理などを行ないます。
元気なうちに子と任意後見契約を結んで、認知症の症状が現れたときのことを先に決めておけるので安心です。
任意後見監督人も選任されるため、子が親のお金を使いこんでしまうというようなことも防ぐことができます。
ただし、任意後見監督人には報酬を支払わねばなりません。月に1~3万円程度が多いです。
法定後見制度を利用して専門家が後見人となった場合には月に2~6万円を支払うことになるため、それに比べたら安価に抑えられます。
デメリットとしては、法定後見制度では認められている取消権がないことです。
判断能力が低下している状態で高額な売買契約などを結んでしまった場合も、取り消すことができません。
家族が後見人になれないケース
以下に該当する場合には後見人になることはできません。
成年後見人になれない場合
- 未成年者
- 過去に家庭裁判所から後見人をやめさせられたことがある人
- 破産者
- 過去に被後見人に対して訴訟を起こしたことがある人とその親族
- 行方不明者
また、任意後見人は、解任されることもあります。
任意後見人に不正行為があったり、著しい不良行為や任務に不適任な事由があったりする場合に解任が認められます。
任意後見人の解任を家庭裁判所へ請求できるのは、本人や任意後見監督人、親族や検察官です。
任意後見契約の解除
任意後見契約は、後見業務が開始する前であれば、いつでも解除することができます。
本人が元気なうちに解除することも可能ですし、後見人のほうから解除することも可能です。
ただし、本人からの解除の場合は、公証人による認証が必要です。
原則、後見業務が開始した後は契約を解除することはできません。
しかし、任意後見人が病気にかかるなどの正当な事由があって後見業務を適切に行えなくなった場合などに、自ら辞任することは可能です。
まとめ
家族が後見人になれるとは限らず、費用もかかる法定後見制度に対して、任意後見制度は本人が後見人を選ぶことができ、事前に契約内容を取り決めることができます。
認知症対策としては家族信託などの選択肢もありますが、後見制度を利用するなら、元気なうちに任意後見制度を検討することをおすすめします。