相続手続きをしようとすると、「出生から死亡までの戸籍を集めてください」と言われます。
誰が相続人となるのかを証明するためです。
一人で上手に「出生から死亡までの戸籍」を集める方法を解説します。
出生から死亡までの戸籍を集める手順
出生から死亡までの戸籍の集め方
- 亡くなった人の本籍地と筆頭者を調べる
- 本籍地の市区町村役場に戸籍を請求する
- 取得した戸籍を読んで、一つ前に編成された戸籍を探す
- 一つ前に編成された戸籍の市区町村役場へ除籍謄本と改正原戸籍を請求する。
- 3と4を繰り返す
- 取得した戸籍の編製時期が生年月日以前であれば終了
という手順になります。
1.亡くなった人の本籍地、筆頭者を調べる
亡くなった人の本籍地と筆頭者は、
住民票の除票を本籍地入りで取得する
ことで簡単に調べることができます。
戸籍は必ずしも住所地の役場で取れるわけではないので注意してください。
住民票の除票の取得の仕方
住民票の除票は、亡くなった人の最後の住所地の市区町村役場で取得できます。
通常の住民票の取得と同じイメージを持ってもらえれば大丈夫です。
住民票の除票を取得するには、
- 請求する人の戸籍謄本(同居の親族の場合は不要です)
- 請求する人の本人確認書類(免許証、パスポートなど)
- 認印
をもって最後の住所地の役所へ行けば請求することができます。
2.本籍地の市区町村役場に戸籍を請求する
出生から死亡までの戸籍を集めるときは、本籍地の戸籍から取得します。
戸籍を請求するときには「本籍」と「筆頭者」を書いて請求します。
戸籍には、以下の3種類があります。
- 戸籍:現在の戸籍です。亡くなった方は死亡の記載があります。
- 除籍:死亡や婚姻、引越などによって、その戸籍から誰もいなくなると除籍となります。
- 改製原戸籍:法改正により戸籍の作り直しが行われた際の、古い戸籍です。
出生から死亡までのこれらすべての戸籍を集めることになります。
申請書には請求する戸籍としてすべてチェックをいれてください。
注意ポイント
戸籍には「戸籍謄本(全部事項証明)」と「戸籍抄本(個人事項証明)」がありますが、相続手続きでは「戸籍謄本」が必要です。
※戸籍謄本は、その戸籍に入っている人の全員が記載されています。戸籍抄本には、対象の人以外の記載がありません。
戸籍の取得方法
本籍地への戸籍の請求は
- 窓口請求
- 郵送請求
の2つがあるのでどちらかやりやすい方法を選びます。
請求するときは、「相続手続のため出生から死亡までのもの」を申請書に明記しましょう。
本籍地と筆頭者が書いてあればあとは役所の人が探してくれます。
戸籍の窓口請求のやり方
亡くなった人の戸籍を窓口で請求するときには、以下のものを持っていきましょう。
- 運転免許証、パスポート又はマイナンバーカード
- 相続人の戸籍謄本(亡くなった人の戸籍に相続人が載っている場合は不要)
- 認印
- 手数料(戸籍謄本:1通450円、除籍謄本・改製原戸籍謄本:1通750円)
手数料は、何通になるか請求してみないと分からないので多めに持っていきましょう。
戸籍謄本を交付してもらったら、窓口で「次はどこに戸籍を請求すればいいですか?」と聞いてみると教えてもらえることが多いです。
戸籍の郵送請求の仕方
戸籍謄本は郵送で請求することも可能です。窓口に行けない場合や遠方のときは郵送請求を利用しましょう。
郵送での請求方法は以下の書類を本籍地の市区町村役場へ送ります。
- 役所所定の戸籍請求書
- 請求する人の運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなどのコピー
- 相続人の戸籍謄本のコピー(亡くなった人と同じ戸籍に相続人が載っている場合は不要)
- 手数料分の定額小為替
- 返信用封筒(切手を貼ったもの)
1の役所所定の戸籍請求書はホームページでダウンロードしてください。
4の定額小為替は郵便局で購入することができます。
戸籍の請求では何通取得するかあらかじめ分からないので、3000円分ぐらい入れておきましょう。
定額小為替が多かった場合は、役所からお釣りの小為替が送られてきます。余った小為替は郵便局にもっていけば現金と交換してもらえます。
返信用封筒の切手についても、84円はあらかじめ貼っておいて、10円分を余分に入れておくと安心です。
戸籍の通数が多いと84円では足りない可能性があります。
郵送での請求方法は役所によって異なることがあるため、役所のホームページでも確認してください。
請求してから1週間~10日程度で返送されます。 郵送、返信封筒とも速達で準備すれば3~4日ほどで戸籍が手元に届きます。
3.戸籍を読んで一つ前に編成された戸籍を探す
戸籍謄本を取得できたら、内容を読んで一つ前に編成された戸籍を探します。
1.戸籍の読み方
「本籍」「氏名」の記載の次に「戸籍事項」という項目があります。ここをチェックしましょう。
「戸籍事項」に【転籍】と書かれていた場合 → 転籍元の市区町村役場へ戸籍を請求
「戸籍事項」に【改製事由】と書かれていた場合 → その役場で取得した改正原戸籍を読む
という流れになります。
改製原戸籍で出生から証明できるかどうかは、次の2で確認します。
2.改製原戸籍、除籍謄本の見方
現在の戸籍はコンピュータ化された横書きのものですが、それ以前の戸籍は縦書きになっていて少し見るのが難しいです。
以下の点をチェックしましょう。
戸籍のチェックポイント
- 戸籍の編製日
- 戸籍の消除日
- 入籍
- 除籍
被相続人についての記載
亡くなった人の名前の欄に、出生日やその戸籍に入った日付などが記載されています。
結婚や転籍などによってその戸籍に入った場合、どの戸籍から入ってきたかが書かれています。
「○○県○○市○○より転籍」 → 本籍「○○県○○市○○」、筆頭者を変えずに○○市役所へ戸籍を請求
「婚姻届出○○県○○市○○山田太郎戸籍から入籍」 → 本籍「○○県○○市○○」筆頭者「山田太郎」として○○市役所へ戸籍を請求
婚姻や離婚の場合は、「筆頭者」が変わるので注意が必要です。
3.戸籍の期間を確認する
戸籍を読む際には、いつからいつまでの戸籍なのか期間を確認します。
この期間が出生より前のものであればそれで戸籍の収集は終了するからです。
〇年〇月〇日編製 → その戸籍が作られた日
〇年〇月〇日消除 → その戸籍が削除された日
〇年〇月〇日除籍 → その戸籍から戸籍に載っている人が削除された日
上記の記載を戸籍の中を探してチェックします。
「入籍」に関しては、
○○戸籍から入籍
という記載のみチェックしてください。出生による入籍の記載は戸籍を集める上では役にたたないので無視してください。
その人の戸籍が作られたとき(編成又は入籍のうち最も遅い日)から消除(除籍又は消除のうち最も早い日)されるまでがその戸籍がその人について証明する期間です。
戸籍の期間を亡くなった人の出生から死亡までそろえるのが戸籍収集の作業となります。
「本籍」の場所が書かれた欄の左に、その戸籍が作られた日付が記載されています。
たとえば、「婚姻の届出により平成〇〇年〇月〇日編製」などの記載があります。
この戸籍謄本にも出生日は書かれていますが、結婚してから作られた戸籍のため、出生の時期からの証明にはならないのです。
この場合はさらに、婚姻する直前の戸籍を取得する必要があります。
戸籍が消失していた場合の対処法
古い戸籍では戦争や震災などによって焼失してしまっていて、戸籍自体が取得できない場合があります。
この場合には、以下の書類を取得していればそれ以上戸籍を収集しなくて大丈夫です。
- 戸(除)籍謄本の交付ができない旨の市区町村長の証明書(書類名は市区町村によって異なります)
以前は「他に相続人がない旨の上申書」というものが必要とされていましたが、
平成28年3月11日付の法務省からの通達で「ほかに相続人がない旨の上申書」は不要になりました。
まとめ
一つの役所だけで出生から死亡までの戸籍がすべて揃うことは稀です。
多くの場合、複数の役所に足を運んだり、郵送で取り寄せることを繰り返して戸籍は揃います。
意外と時間がかかり、戸籍が消失しているなどのケースの場合にはさらに手間もかかります。
司法書士は職権で戸籍を取得することができます。時間や手間をかけたくない場合には、相続登記とあわせて専門家に依頼すると手続きがスムースです。