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借地権の相続方法とトラブル回避のための全ポイント解説!

 

自宅は自分のものだけど土地は地主さんのものというケースはよくあります。

このような状態で家を建てる権利のことを「借地権」といういいます。

借地権の相続には思わぬ相続税が発生したり、親族間でのもめごとに発展したりと注意が必要です。

あなたの親の家が借地の場合はぜひこの記事を読んでおいてください。

 

借地権とは

借地権とは他人の土地の上に建物を建てる権利です。

人の土地に勝手に建物を建てるのは違法な行為です。土地の持ち主から請求があれば建物を壊して明け渡さなければなりません。

借地権がきちんと成立するためには、建物を所有することを目的として

  • 土地を所有者から借りる(賃貸権)
  • 土地の利用権を認めてもらう(地上権)

のどちらかの方法で土地の所有者ときちんと契約をする必要があります。

なお住居でなく事業用のものでも借地権は成立します。

借地借家法

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 借地権 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。

借地権が成立している場合、相続の際には借地権も亡くなった方の権利として引き継ぐことになります。

あなたの親の家が他人の土地の上に建っていてそれを相続する場合には、通常は借地権も一緒に相続することになります。

 

借地権を相続する方法

借地権は建物の所有権とは別の権利ですが、通常は以下の手続きによって相続します。

ポイント

  • 建物の名義変更をする
  • 借地契約書があれば借地契約の名義人の変更をする

以下の規定があるので借地権を相続する場合は、建物の名義変更をすれば大丈夫です。

借地借家法第10条

1 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。

ただし、以下の場合には注意してください。

注意ポイント

  • 土地に亡くなった方名義の地上権が登記されている
  • 土地に亡くなった方名義の賃借権が登記されている

まれに地上権や賃借権の登記がされている場合があります。

この場合は土地についても地上権や賃借権の名義変更が必要になります。

相続の際には、地は他人のものだからといって調査を忘れると必要な手続きを忘れてしまうことになるので注意しましょう。

 

遺産分割協議書の書き方

借地権を遺産分割協議書に書く場合は、厳密にいえば建物とは別の財産ですので借地権を別途記載するのが丁寧な書き方です。

以下が借地権を相続する際の遺産分割協議書のサンプルになります。

1.次の財産は藤沢太郎が相続する。

下記土地の借地権

所 在 藤沢市藤沢

地 番 ○○番地の〇

地 目 宅地

地 積 ○○.○○ ㎡

⑵ 建物

所  在  藤沢市藤沢○○

家屋番号  〇番〇

種  類  居宅

構  造  木造スレート葺1階建

床面積  1階 ○○.○○㎡

 

 

地主の承諾は必要か?

借地権の相続に関しては建物の名義の変更をします。

この際に、地主さんの承諾や承諾料の支払いは不要です。

通常は、借地上の建物に関して

  • 譲渡
  • 建替・増改築
  • 用法の変更

などがあった場合は、承諾料を払うことが習慣となっています。

名義書換料、名義変更料などと呼ばれることもあります。

譲渡の場合は借地権価格の10%、建替・増改築の場合は更地価格の2~4%ほどを払うことになります。

民法の以下の規定を根拠としています。

民法第612条

  1. 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
  2. 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる

ただし、相続の名義変更に関しては、民法第612条の譲り渡しに該当しないため、名義変更に対しての地主の承諾が不要です。

承諾が不要なため承諾料を支払う義務もありません。

相続時に地主の方も勘違いをして承諾料を求めてくるケースがありますのでこの点は知っておきましょう。

 

借地契約があれば地主さんと契約者変更の手続きをしましょう

借地契約は口約束だけで行われていることも多いのですが、契約書がきちんと存在する場合には契約者の変更をしておきましょう。

契約者の変更をしないと契約が無効になるわけではありませんが、相続人全員に対して地代の支払い義務が発生したり、連絡先が不明となったり色々不都合があります。

借地権を相続した際には地主に挨拶をして契約書があるか確認しておきましょう。

 

借地権は意外と高額な財産。相続税の発生に注意!

相続する際の建物の評価額とは、固定資産税評価額になります。

建物の固定資産税評価額は土地に比べて低額なので相続の際にそれほど神経質になる必要はないのですが、借地権付きの建物では注意が必要です。

借地権付の建物を相続する場合、相続財産としての評価は

借地権付建物の評価額

建物の固定資産税評価額 + 建物が建っている土地の評価 × 借地権割合(%)

となります。

つまり、建物だけの相続をしたつもりが土地の評価の何割かを相続していたことになります。

東京の商業地では、借地権割合が80~90%、住宅地でも60%~70%ぐらいあります。

「えっ、そんなに高い金額で評価されるの?」

って思いますよね。

あなたが借家を引き継ぐ際には知っていないと大変なことになります。

評価の低い建物だけを引き継いだつもりが、思わぬ高額な相続税の支払いになってしまうケースがありますよ。

 

借地権の評価額の調べ方

借地権については土地の評価額と借地権割合で大体の評価額をだすことができます。

借地権の財産的価値を調べるには、国税局のHPの路線価図・評価倍率表で調べることができます。

 

国税庁のホームページには全国の土地の路線価と借地権割合が載っていますのでそこで借地権の概算を調べることができます。

実際に藤沢市の路線価図が以下のものです。

 

路線価図ではその道路に面している土地の評価額がいくらかが書いてあります。

〇の中に「590B」など数字とアルファベットで路線価と借地権割合が表現されています。

数字部分は、その道路に面した1㎡あたりに土地評価額(千円単位)です。

「590」と書いてあった場合には、1㎡辺り59万円ということになります。

アルファベットの部分は借地権割合を表します。上部に各アルファベットに対応する借地権割合が記載されています。

Bと書かれていれば借地権割合は80%ということなります。

藤沢駅の周りではB,Cといったアルファベットが多く、借地権割合が70~80%と高い地域であることが分かると思います。

 

注意ポイント

上記の説明は正確な借地権の価格の計算方法ではありません。あくまで概算の計算方法です。

相続財産上の評価はもっと複雑な計算になり正確な価格を出すのは難しいです。

相続税の心配があるときには税理士等の専門家に相談してください。

 

 

借地権には地代の支払い義務がある

 

借地上の建物を相続すると地代の支払い義務も引き継ぐことになります。

あなたが相続した家に住まない場合でも毎月地主さんに地代を支払うことになります。

建物の固定資産税がたいしたことがないと思って相続をするのは危険です。

地代の支払いを数か月怠った場合には、借地権の解除原因になります。

借地権の解除が認められると建物所有者は更地にして土地の所有者に返す義務が生じることになります。

相続をする場合は、毎月地代の支払いが発生するということを認識しておきましょう。

 

借地権は売却が可能

借地権は売却が可能です。しかも建物価格より大幅に高い値段で売却することができます。

「買ってくれる人がいるの?」

と通常は思いますよね。

借地権の買い取りの話があった場合は、地主は借金してでも買い取れと言われているぐらいです。

借地権の買い取りの要請は地主側からするとまたとないチャンスです。お金が工面できるのであれば買い取ってもらえます。

地主としては、借地権付の土地は市場で一部の投資家を除いてほとんど買い手がいませんが、借地権を買い取ると所有権になります。

そうなると買い手も多くいるので不動産の価値は一気にあがり、借金をして借地権を買っても地主としては十分に得なのです。

 

借地権の売買では譲歩が必要

借地権の評価額は土地の借地権割合に基づいて決定されると書きましたが、実際の売買価格はそこまでの価値はありません。

相続財産上の評価が高いからといって、そのままの値段を地主さんに提示してもまず断られます。

実際の取引の現場では、借地権割合50%ぐらいの気持ちで交渉にのぞむと地主さんともめることが少ないように感じます。

意地をはって借地権割合どおりで譲らないとするとあまりいいことがありません。

地主さん以外の人に家を売ろうとしても承諾が必要ですし、承諾料も取られて手元に残るお金は少なくなります。

それならばお互い納得できる形で処分してしまった方がいいでしょう。

ポイント

借地権の買い取りでは、借地権割合にこだわらない。

譲歩して5割ぐらいの割合で取引した方が結果的に得なケースがほとんどです。

 

他の相続人との関係にも注意

借地権は高額で売却できるケースもあるので、相続時の財産の分け方については注意が必要です。

建物の価値はそれほど高くないと思っていた相続人からあとで不満がでる場合があります。

もちろん自分で遺産分割協議書に実印を押しているので知識がなかったのがいけないのですが、みんなで平等に分けたいといった場合には借地権価格もきちんと計算して財産を分けましょう。

借地権価格の算出はかなり専門的な知識が必要になるので相続に強い税理士や場合によっては不動産鑑定士などへ相談しましょう。

 

借地権の共有は絶対に避ける!

借地権の相続をする際、よく分からないからといって相続人全員の共有とするのは絶対にやめましょう。

借地権を共有とすることで以下のようなデメリットが生じます。

借地権共有のデメリット

  • 借地権の処分の際に全員の意思統一が必要
  • 売却の際、価格や処分方法で必ずもめる
  • 建替、増築、担保設定など全員が契約当事者となる
  • 2次相続、3次相続と時間が経つにつれ名義人が増えていき収拾がつかなくなる
  • 一人でも認知症になり、後見制度を利用すると取引が大幅に制限される

共有 = もめる

と思ってください。

預貯金などは、相続人みんなが欲しがる財産なので話の中心となりますが、借地権はよくわからないので後回しにされがちです。

結果、

「欲しい人が誰もいないのでみんなの共有にしておこう」

なんて結論をだしてしまうこともありそうです。

借地権の共有はあとあとトラブルのもとなので絶対にやめましょう。

必ず誰かが一人で名義を持つようにしてください。

 

まとめ

借地権の相続のポイントは

借地権相続のポイント

  • 建物の名義変更をすれば基本的にOK
  • 借地権は相続財産上高額の評価になる場合がある
  • 地主の承諾や承諾料は不要
  • 借地権は売却できる
  • 共有は絶対に避ける

ということになります。

相続財産の中に借地権がある場合は、借地権について詳しく知らないことで思わぬトラブルになったりするので注意してください。

相続税の面では自分で判断しようとせず、相続に強い税理士に相談することをお勧めいたします。

弊所でも借地権に関するご相談承っております。

借地権の相続手続きについてお困りの方は

お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

 

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